日本語のスラング(slangs)

日本語のスラング(slangs)

この記事では、現代の日本におけるスラング(slangs)を紹介したいと思います。日本の文化に関心を持っている読者のみなさんのお役に立てば幸いです。この記事で取り上げるスラングはある程度、使われてきた実績を持つものを厳選して紹介しており、そしてこれらは、すぐになくなることはないであろうと思われます。

スラング以外の新しい言葉については以下の記事も参照ください。

Chuni-byo (中二病、ちゅうにびょう)

【名詞】

Chunibyo (中二病, ちゅうにびょう)

日本語で「中二」とは中学二年生のことであり、米国でいうと8年生で、日本では通常14歳です。「病」は「病気」など正常な機能ではない状態を表します。

中二病は思春期の少年や少女たちがしばしば表す、大人として扱ってほしいという欲求や、彼らの自己愛を説明する際に使われます。中二病という言葉はそうした特徴を病気になぞらえたものです。この言葉が用いられるようになったのは1990年代の終わりごろであると言われています。

しかし、実際にはこの言葉が思春期の少年少女たちに用いられることは極めて少ないのです。むしろ、年齢的には成人しているのに思春期のような言動をする人たちに対して、その意識のギャップを嘲笑するために用いられています。

現在のところ、中二病という言葉が深刻な中傷や差別を含んだ言葉であるとは認識されていません。そのため「自分は中二病だ」と自嘲気味に述べる人も珍しくありません。

以下のような言動は、中二病に典型的にみられる言動だと考えられています。

典型的な中二病の言動

不良少年がするような反社会的な発言やふるまいをカッコいいと思う

このような現象はもしかしたら日本以外の国でもみられるものかもしれませんが、日本では中二病の人にとってこうしたふるまいは単に憧れにすぎないものであり、実際に不良グループに加わったり、反社会的活動を行うことは稀です。

自分は超自然的な能力を持つ者であると思う

自分を超能力や魔法など超自然的な能力を持つ能力者であると思います。そしてその能力が解き放たれたとき、他人を傷つけてしまうのではないかと心配します。こうした思念は漫画やアニメから大きな影響を受けたものです。片目を覆う眼帯はこうした超自然的な力をコントロールするためのアイコン(icon)とされています。眼帯については後述します。

自分の周りにやっている人が誰もいない趣味を持つ

中二病の人は周りに誰も楽しんでいる人がいない趣味やこだわりを持つことがあります。そうすることで自分は他人とは違うという想像を楽しむのです。

包帯や眼帯をかっこいいと思う

これは主にアニメや漫画の影響だと考えられています。典型的なイメージは、主人公が激しい戦いの後に勝利を収めたが、主人公も敵から攻撃を受けて傷ついているというものです。これは私の個人的な意見ですが、上記のようなヒーロー(a hero)のイメージに加えて、負傷したことで周りの人から気遣いをしてもらいたいという願望も隠されていると思います。

日常の小さな行為をヒーロー(a hero)っぽく行う

たとえば、懐中電灯や電気シェーバー(an electric shaver)を使う前に、まるでそれがライトセーバーであるかのように恰好をつけた動作をするなどがあります。

Enjou (炎上, えんじょう)

【名詞】

Enjou (炎上, えんじょう)

「炎上」とは本来、物体が激しく燃えるさまを表す言葉ですが、近年の日本では個人や組織が社会(世間)から強く非難されている状況を表す言葉として使われています。SNSでの不適切な言動が原因とされるものが代表的です。

この言葉が使われるのは、インターネットでの不適切な行いが原因で「炎上」してしまった場合だけではありません。たとえば芸能人や政治家ならスキャンダルが報道された結果として「炎上」することもあります。

Guguru (ググる, ぐぐる), Gugure (ググれ, ぐぐれ)

【動詞】

Guguru (ググる, ぐぐる)

Googleを使って知らないことについて調べることを表す動詞です。Google以外の検索エンジン(a search engine)を使って調べる場合もこの言葉が使われることがあります。他人に自分で調べることを促したり命令する場合は「ググれ」のように使います。

Hiyoru (ひよる, ヒヨる), Hiyooteru (ひよってる, ヒヨってる)

【動詞, 形容詞】

Hiyoru (ひよる, ヒヨる)

「ヒヨる」は動詞で「ヒヨってる」は形容詞です。

「ヒヨる」は「日和見」という言葉から発生した言葉です。日和見とは自分の立場を明確にせず周りの人の顔色をうかがい、最終的に優勢な多数派の側につこうとする態度のことです。これはイソップ童話の「卑怯なコウモリ(The Bat, Birds, and The Beasts)」そのままのイメージです。

しかし、スラングとしての「ヒヨる」は日和見な態度をとる人の恒久的な個性/人格を表す際に使われるだけでなく、何らかの理由で一時的に日和見になっている人の一時的な状態を表す際にも使われます。「ビビる」というスラングと似た使われ方をしますが「ビビる」は「ヒヨる」よりも臆病や小心になっている状態に対して使われます。

「ヒヨる」の使用例

「彼は会議の時にいつもヒヨるから信用できない」

A「彼女をすぐデートに誘うべきだ。でないとあいつにとられちゃうぞ」
B「でも、そんな勇気がないよ」
A「お前さ、ヒヨってんじゃねえぞ!」

Menhera (メンヘラ, めんへら)

【名詞】

Menhera (メンヘラ, めんへら)
ロールシャッハ・テストのインクのしみ

心が不安定で周りの人を混乱させがちな人。こうした人を表すメンヘラという言葉が使われるようになったのは2000年代の最初からだと言われています。この言葉は厳密な臨床心理学に基づいて定義されているわけではありませんが、この言葉で表される人たちの特徴から、一般的には境界性パーソナリティー障害(BPD)を持つ人たちを表す言葉として認識され、使用されています。

具体的には、他人から見たら些細なことで激怒する、自殺をほのめかす、泣く、時には暴力やストーカー(stalking)行為におよぶこともあるとされています。

このメンヘラという言葉は、BPDと同じパーソナリティー障害として定義されている反社会性パーソナリティー障害を抱える人に対して使われることはありません。

同様に、統合失調症双極性障害などの精神障害、または知的障害などの、社会生活を送る上でより深刻で当事者や周囲の人にとって困難さの度合いの高い問題を抱える人を表す際に使われることは皆無です。メンヘラという言葉は、幻覚、幻聴が確認されたり、5W1H(誰が、何を、どこで、いつ、なぜ、どのように)の認知に支障をきたすような医学上の問題を抱える人に対して使われることはありません。メンヘラという言葉は、そうした深刻な問題を抱える人に対して使うには少々、軽くかつ真摯さに欠けるイメージがあるからだと私は思います。

こうしたことから、メンヘラという言葉は日本においてBPDの人を実質的に表していると考えて間違いはないでしょう。

メンヘラという言葉は心の問題を抱えた人に対して使われる言葉ですので、使用には注意が必要です。誰かに直接「あなたはメンヘラですか?」と尋ねることは、相手にとってはそれは敵意や悪意の表明であると受け取られる可能性があります。

Murige (無理ゲー, むりげー)

【名詞】

Murige (無理ゲー, むりげー)

「無理ゲー」という言葉はもともとゲーム(a video game)を意味する言葉で、あまりにも難しすぎてクリアするのがほとんど不可能なゲーム、またはプログラミングのミスでどうやってもクリアするのが不可能なゲームに対して使われていた言葉です。

しかし現在の日本では「無理ゲー」という言葉は日本における絶望的な状態を表す際に使われるようになりました。具体的には1990年代から続く不況の中、生まれた環境によっては社会的に成功することがほとんど不可能である人たちが置かれた状況を「クリアすることが不可能なゲーム」になぞらえて説明する際に使われています。

2021年に出版された書籍「無理ゲー社会」(著者:橘玲)はベストセラーになりました。

日本における不平等については以下の記事も参照ください。

Netouyo (ネトウヨ, ねとうよ)

【名詞】

Netouyo (ネトウヨ, ねとうよ)
ネトウヨ (インターネット上の右翼)

「ネト」はインターネット、「ウヨ」は右翼の略です。「ネトウヨ」という言葉は主にインターネット上のSNSや掲示板などで右翼的な立場をとる人たちを表す際に使われる言葉です。この言葉は2000年前後から使われるようになったといわれています。

こうした人たちの右翼的傾向の強さは人によってさまざまで「日本人はもっと誇りを持つべきだ」といった穏当なもの、既存の保守政党への支持を表明するもの、あるいは「外国人を日本から排斥すべきだ」といった過激なものまでさまざまです。

しばしば指摘されるネトウヨの特徴としては、インターネット以外の場でも政治的な活動をしている人はごく少数で、ほとんどの人はインターネット上で過激で右翼的な発言をしていても実生活ではごく普通の人であることが多いことがあげられます。

Owakon (オワコン, おわこん)

【名詞】

Owakon (オワコン, おわこん)
Owakon (オワコン, おわこん)

「オワコン」とは「終わったコンテンツ(a content)」の略語で、時代遅れになった、または陳腐化したコンテンツを表す言葉です。たとえば、かつては多くの利用者を誇ったWEB上のサービスが、現在は時代遅れになり使う人もいなくなった、という場合にそのサービスに対して用いられます。

重要な点は、それらはかつて有名だったという点にあります。一度も有名になったことがないサービスやコンテンツに対してオワコンという言葉が使われることはありません。さらに、オワコンという言葉は文字通りの「コンテンツ」だけに使われるわけではなく、幅広い対象に使われています。

「あのファッションはもうオワコンだ」

「FAXなんてとっくの昔にオワコンになってるよ」

さらに、WEBがコミュニケーションのツールとして主流になった現代において、部下にFAXを使うよう強要する上司がいるような時代遅れの会社に対して、

「あの会社はオワコンだよ」

といった使い方をすることもあります。

Oya-gacha (親ガチャ, おやがちゃ)

以下の記事を参照ください。

Paripi (パリピ, ぱりぴ)

【名詞】

Paripi (パリピ, ぱりぴ)
パリピ

「パリピ」とは英語の「パーティーピープル(party people)」の略語で、複数形です。単にパーティーを楽しむ人たちという意味だけではなく、私生活が充実しており、多くの友人を持ち、恋愛を楽しみ、頻繁にパーティーを催している人たちというイメージを伴います。

この言葉は2010年代から使われるようになりました。

パリピという言葉を使うのは、上記のような充実した生活を送っている人ではない場合が多い。誰かが「彼らはパリピだ」と言う場合は「でも自分は違う」というある種の皮肉や自己憐憫を含んでいる場合が少なくありません。

Riazyu (リア充, りあじゅう)

【名詞】

Riazyu (リア充, りあじゅう)
リア充

「リア充」とは「リアル(real)が充実している(人たち)」という意味です。リアルとはインターネットの対義語として使われています。つまりリア充という言葉は、インターネット上の活動以外の生活が充実している人たちのことを表す際に使われます。リア充という言葉のもつイメージは遊びや恋愛と強く結びついているため、たとえ社会的地位の高い仕事について安定した収入を得ている人であっても、友人が少なかったり恋人がいなかったりする場合はリア充とはみなされない傾向があります。

Tawaman (タワマン, たわまん)

【名詞】

Tawaman (タワマン, たわまん)

タワマンという言葉は英語の「タワーマンション(a tower mansion)」の略語です。英語の「マンション」は以下のような大邸宅を指します。

A mansion
A mansion

しかし日本では「マンション」という言葉は一般的に、コンクリートを用いた集合住宅に対して幅広く使われています。

1997年の規制緩和をきっかけに、50階を超える高層のマンションが数多く建設されました。「タワマン」という言葉はこのような、比較的新しい高層住宅に対して使われています。

本当に裕福な人はタワマンには住まない

誰が言ったかわからないが、誰もが知っている、このような言葉があります。

これを裏付ける調査結果があります。早稲田大学人間科学学術院の橋本健二教授によると、日本で最も所得水準の高い地域は東京都港区で、住民の40%が年収1000万円以上であり、これはタワマンが集中している地域の約2倍の所得水準だそうです。

実際、タワマンでは不便なことがたくさんあります。朝夕の通勤時間帯はエレベーターが混雑し、高層階から地上に出るまで20分かかるタワマンもある。また、言うまでもないことですが、日本は地震の多い国なので高層建築の耐震性を疑問視する声も多いのです。

さらに最近では、高層階に住むことで妊婦の流産率が上がる、子供の知的発達に悪影響がある、といった健康への被害についての専門家の意見もあります。

また、タワマンの階層は、その価格の結果として、社会階級の高低を直接的に表しているといえます。つまり階層が上に住む人ほど偉いということになります。

したがって、日本の社会においてタワマンを買おうとする場合、自分の上司が下の階に住んでいないか、顧客である取引先の社員が下の階に住んでいないか、などを事前によく調査することが必要となります。

これは「ついうっかり」では済まされない問題です。冗談でもなんでもありません。今の日本では、このような失敗をしでかした人はリスク管理・分析能力を疑われ、労働者としての立場を失うことにもなりかねないのです。

「調べる必要があるとは思わなかった」と言えば「お前はリスク管理ができない無能だ」と判断され「知ってはいたが大丈夫だと思った」と言えば「非常識な奴だ」と断じられます。結果はいずれにせよ悲惨なものになります。

主にインターネット上で、タワマンは現代日本の格差社会の象徴とも評されることも少なくなく、旧約聖書の「バベルの塔」に例えられることもあります。

Zirai (地雷, じらい)

【名詞】

Zirai (地雷, じらい)

「地雷」という言葉は、犠牲者がそれを踏むことで作動する対人殺傷兵器である地雷と同じ書き方、読み方で表現されます。

現在の日本では、個人の努力では回避することが困難、あるいは多大な努力と用心によってしか回避できない不幸な出来事を地雷という言葉で表現します。また、人生を左右するような重大な災難だけでなく、日常生活におけるさまざまな不快な出来事を冗談交じりに表現する場合にも使われています。

具体的な使われ方としては以下のような例があります。

「あの客、たった1000円しか使わなかった。あ~今日は地雷客しか来ないな」

「マッチングアプリで知り合った女性とデートをしたんだけど、いきなり結婚を申し込まれたよ。断ったら、『一生呪ってやる!』と言われた。かろうじて逃げてきたけど、あれは間違いなく地雷だな」

読者の中には危険な兵器をジョークのネタにすることは不謹慎だと感じる方もおられるかもしれません。現代の日本で地雷に対して現実的で身近にある恐怖の対象というイメージを持っている人はごく少数であることが一因であると私は思います。

多くの日本人にとってカンボジア(Cambodia)やボスニア・ヘルツェゴビナ(Bosnia-Herzegovina)における悲劇は知識として知ってはいても、遠い国で起こった出来事でしかありません。

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