「マスク警察」とは何か?【同調圧力と日本社会】

「マスク警察」とは何か?【同調圧力と日本社会】

日本のTwitterではしばしば「マスク警察」という言葉がトレンドになります。トレンドとはつまりそれだけ多くの人によってツイートされている話題だということになります。

今回の記事では「マスク警察」とは何か、そこにはどのような社会的な背景があるのかについて私の意見を述べたいと思います。

はじめに – マスクと日本人

皆さんの中に日本に旅行したことがある方はおられるでしょうか。海外の方が日本を訪れて驚いたこととしてよく紹介されるエピソードとして「みんながマスクをしているので驚いた」「日本では深刻な伝染病でも流行しているのではないかと怖くなった」といったものがあります。

まずはじめに理解していただきたいのは、日本では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)(以下、COVID-19と記載する)の世界的な流行の以前から、一般人が医療用マスクを着けることは決して珍しいことではなかったという事実です。

想像してみてください。あなたは電車に乗っています。あなたの隣に座っている人は明らかに具合が悪そうです。その人は、しきりに咳や、くしゃみをしていて、どうやら風邪をひいているようです。その人はマスクを着けておらず、くしゃみ、咳をするたびに唾液の飛沫があなたのほうまで飛んできます。

さて、あなたが育った文化ではこの状況と、このマスクをしていない人に対してどんなことを思うでしょうか。

「風邪は伝染病だけれども、みんながなる病気だからお互い様だ。マスクをしていないからと言ってその人に腹を立てるようなことではない」と考えますか?

それとも逆に「風邪をひいているのなら他人にそれをうつさないように配慮すべきなのに、なんて非常識な人だ!」と憤慨するでしょうか。

私は、現代の日本人の多くは後者の反応をすると考えます。前者の感情がわきおこるためには対象者が「仲間」であるという意識がまず必要になると思いますが、現代の日本人には、見知らぬ人々の心を広くつないで仲間にすることができる、そのようなものがありません。

アニメも、ポケモンも、トヨタのプリウスも、武士道も、その役割を果たすことはできません。

ですので、基本的には上記のような場面では、多くの日本人が「マスクをしていない人」に対して怒りの気持ちを抱くことになります。怒りを多少、やわらげるものがないわけではありません。たとえばマスクをしていない人が自分の出身大学のジャージ(tracksuits)を着ていたなら「なんだ私が卒業した大学の学生か」となり怒りも多少はやわらぐかもしれません。

これは先に述べた仲間意識が働くことで「マスクを着けていない非常識な許せないやつ」という認識から「仲間だからお互い様だ」というふうに変化したからです。

いずれにせよ、この節の結論としては、日本人はなぜみんなマスクを着けているのか?それは「他人を不快/不安にさせないため」の配慮を社会から求められているからだ、ということになります。

マスク警察とは何か

では次に本題である「マスク警察」という言葉について説明します。「警察」とは英語に直訳すると「police」であり、法執行機関や治安維持を目的とした組織のことを指します。

しかし「マスク警察」というのはこのような組織のことではなく、一般市民による自主的な活動のことであり、それに加えてそのような活動をしている人たちを指す言葉です。そうなると英語で表現するなら自警団を意味する「vigilantes」の方がより適切ということになります。

市民による相互監視

さて言葉の意味を明確にしたところで、日本におけるマスク警察について説明します。マスク警察を簡単に説明すると「マスクをしていない者を常に探しており、見つけ次第、対象者が最も困る方法で通報などの行動をすること。あるいはそうした行為を行う人たち」であると説明することができます。

対象者が最も困る方法とは、具体的には例えば、配達中の郵便配達員がマスクを着けていなかったことを発見したなら、配達員本人に直接文句を言うのではなく、郵便局にクレーム(complaints)の電話を入れるということです。

他には学校の教師が休日にショッピングモールで買い物をしていたとして、それを発見した場合もまた本人に直接文句を言うわけではなく、教師が勤務する学校に電話か手紙かWEBサイトのお問い合わせフォームなどの方法によって通報します。

他には変則的な方法としては、街で有名人を見かけたとして、その有名人がマスクをしていなかった。この場合は有名人が広告塔を務める企業にクレームを入れることもあります。「マスクをせずに外出するようなやつを広告に使うな」というわけです。

これらの方法は日本の社会では非常に効果的に機能し、当事者は非常に困難な立場に置かれることになります。読者の中には「それは単なる嫌がらせではないのか」と感じる方もおられるかもしれません。しかし「マスク警察」を行っている人たちは、こうした行いには正当性があると信じているし、後付けの理論で正当化することも容易です。

防衛

このような「マスク警察」の行動により社会の活動にさまざまな変化が起こっています。たとえばデパートなどの商業施設の一部では入口に「マスクをしていない方の入店を禁止します」といった看板が立てられたり、店内を巡回するスタッフがマスクをしていない客を見つけた場合はマスクをつけるように注意したりします。

なぜこのようなことになるかというと、マスク警察が施設側に「お前の施設でマスクをしていない人を見たぞ」というクレームを入れるからです。ですので施設側としても「うちとしてはやれることはやっている、我々も努力しているんです」という体裁を整える必要があるのです。

さまざまな「警察」

読者の皆さんがこうした日本の事情を知って驚かれたか、または自分の国よりもマシだと思われたかわかりませんが、日本ではマスクの着用に限らず以前からこうしたことは起こっています。たとえば「自粛警察」という言葉もまたCOVID-19の世界的な流行に伴って生まれた言葉です。「自粛警察」は「不要不急(必須でも緊急なわけでもない)」の外出をしている人や、行政機関からの自粛要請が出ているにもかかわらず営業している商店などを見つけ出して社会的に制裁を加えることです。

刑事事件になることも

具体的には、営業しているお店のシャッターに「休業しろ」「死ね」などと書いた紙を張り付けたりするといったものです。さらには「自粛警察」活動を行う人たちが住んでいるエリアではない他のエリアから来た1自動車に対して「煽り運転2」をする、駐車している車に傷をつけたり、車のフロントガラス(windshield)に「来るな、帰れ」などといった嫌がらせの文章を書いた紙を張り付けるなどの嫌がらせ行為が行われています。

こうした行為は道路交通法の違反、名誉棄損、業務妨害などの犯罪行為として立件される可能性があると警鐘を鳴らす法律関係者もいます。

ファシズムの根底にあるもの – 不安

辞書で「ファシズム」を引くとおおむね以下のように定義されています。「自由主義を否定し統治機構に対する絶対の服従と反対者に対する弾圧」

ここまで述べてきてあえて説明の必要はないと思いますが、日本で起こっている「マスク警察」の現象とは「お前個人の意見になど価値はない。とにかくマスクを着けろ。そのためには我々は手段を選ばない」というもので、これは明らかにファシズムであるといえます。

これは私個人の感想ですが、ではなぜこのようなファシズムが日本社会を席巻してしまうのか、その根底には不安があるのだと考えます。遺伝子研究によれば日本人は「世界で最も不安を感じやすい」とされ、その根拠は不安を感じやすいSS型遺伝子の持ち主が国民のおよそ65%を占めているという研究結果があります。

不安なのです。みんなが同じ行動をしているのに、一人だけ違う行動をしている人がいると不安になるのです。なぜかというと、そんな人が社会にいると、自分がやっていることがはたして正しいのかどうかの確証がもてなくなるからです。

現代の日本人は、自らの中に「何が正しく、何が間違いなのか」の基準がなく、常に皆に合わせてどう行動するかを決めている。ですので、みんなと違った行動をしている人を見つけると途端に不安になり「え!もうマスクをしていない人を攻撃してもいいトレンドは終わったのか?」とうろたえることになる。

そんなわけで、みんなと違う行動をしている個人を攻撃することで不安をなくそうとするのです。

私が繰り返し述べてきた日本社会の問題点である同調圧力がなぜ生じてしまうのか、様々な意見がありますが、私は不安が原因であるとの考えを支持しています。

「誰かがやっているから正しいに違いない」そうやって動作を始めたらもう止められない。誰も立ち止まって本当に正しい方向に進んでいるのかと問題提起することができない。そんなことをする人がいれば「周囲を不安にさせた悪者」として圧殺される。これが同調圧力であり、日本型ファシズムです。

この問題を解決できない限り日本人はこの先も何度でも同じ過ちを犯すでしょう。

おわりに

今回の記事では日本で大きな話題になっている社会問題である「マスク警察」について私の意見を述べました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

  1. 自動車に取り付けられたナンバープレートを見ればわかる
  2. 前の車に肉薄して威圧するなどの極めて危険な行為。もちろん日本でも法律違反。

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